大学・大学院時代と環境問題にまつわる研究を進めてきた林さん。
現在は銀行員の第一線で活躍されていますが、大学院まで進学し研究に取り組まれたその情熱の源は何か、その上でなぜ金融業界に身を置くようになったのか。また今後どのような形で環境問題と関わっていきたいか、お話しを伺いました。
強い責任感のもとに、社会へインパクトを残せる人材へ
ー 環境問題を意識するようになったきっかけは何だったのでしょうか?
もともとは、食糧問題に関心がありました。
大学への進学を考えていた際、世の中の大きな問題を解決しなくては、という責任感があったため、農学部に進学しました。手掛けた研究としては、降雨後の水がどのように栄養を含み、河川や海洋に流れ出るのか、そこで果たす森林の役割を分析する研究でした。
研究自体はとても面白かったのですが、もう少し広い視点で環境問題を学んでみたい、自分が関わることでよりインパクトが出せるところを見極めたいと思い、大学院では文理融合で地球環境を学べる学部へ進学し、海外へインターンもしながら、廃棄物処分時の汚染物質処理に関する研究をしました。ゴミ問題は、画期的な開発の余地があまりなく、廃棄物の処分フィールドも今後減ることはないため、根本的にゴミゼロにしていかないと解決しないな、と思いました。
金融業界でも
環境問題の解決に向けた取組みが加速中
ー 水問題・ゴミ処理問題と、まさに環境問題の代表ともいえる課題に取り組まれていましたが、銀行へ就職したのはどのような経緯だったのでしょうか?
就職先は、実は環境問題と切り離して考えました。
研究に取り組んでみましたが、結局コレを解決したい!という明確なビジョンが得られなかったのです。なので、将来「この課題に取り組みたい!」となったときに、実現できるスキルや権力を持っておきたいなと思い、自分の可能性を広げることができ、多様なキャリアが積めるという観点から、最終的に銀行を選びました。
この会社で働き始めてみて、大手企業等多様なクライアントに提言することも多々あり、銀行ならではのインパクトの出し方を実感しました。銀行が変わっていくことで、世の中もよい方向に変わっていくかもしれない、影響を与えられるもしれない、とそう考えるようになりました。
最近金融業界内でも、「環境影響評価融資」・「グリーンボンド」・「SDGs評価融資」など、環境問題の解決に向けたB to Bに対する働きかけが始まっています。
簡単に説明しますと、
・「環境影響評価融資」は環境配慮した企業に低金利で融資するというもの
・「グリーンボンド」は外貨を環境預金という形で集め、環境系に取り組んでいる企業へ預金を使うというもの
・「SDGs評価融資」は銀行側が独自に定めた評価基準に基づき、企業のESG側面の取組みや情報開示、SDGs達成への貢献を評価し、取組みや情報開示の適切さについての現状分析、今後の課題、課題への取り組み事例などが還元されるというものです。
こうした経済合理性・インセンティブを付ける形で企業の環境問題の解決に向けた働きかけをしていくだけでなく、脱炭素に向けて化石燃料系の発電所ビジネスには融資しない、という動きも加速してきています。まさにBtoBならではの手法で、あらゆる業界に影響を与えることができるのではとおもしろく感じています。世の中の投資家たちも、グリーン投資でないと投資しないと言ってくる時代です。今や環境ビジネスを推進することが、金融業界としても注力分野とされています。
ー これからはどのように活動されていく予定ですか?
マネーゲームが繰り広げられる経済のなかで、よりよいお金の使い方をクライアント企業と共に探していき、環境問題への解決に取り組んでいきたいと思っています。個人的には将来モノで溢れていない田舎で過ごしたいと思っていますが、それまでは金融業界に身を置き、お金を武器として周りを変えていけるような仕事ができればと思います。
●取材を終えて
環境問題に対して、研究というフィールドから始まり、現在そしてこれからはビジネスのフィールドで関与していく林さん。環境問題と経済は切り離せないなかで、よりよいお金の循環を探ることから環境問題にアプローチすることで、社会によりよいインパクトを与えることができるのかもしれません。これからの金融業界の動き・環境ビジネスへの影響がどう変貌していくのか、目が離せませんね。
あなたも、金融業界の動向を共にウォッチしていくのはいかがでしょうか?