長野の伝統受け継ぐ若きChalleng”ER” 徳永虎千代さん

100年続くリンゴの産地で4代目としてリンゴ農家を継がれた徳永さん。
20代前半で農園を引き継いで以降、生産者の高齢化や農家減少に伴い増えていく耕作放棄地など長野の農業が置かれている実態を目の当たりにし、農業に新しい風を吹き入れるべく、果実栽培のみならず耕作放棄地を新たに活用するためにクラウドファンディングをやってみたり、農業×福祉の連携を始めたり、と目を見張るスピードで社業を変革させ、地域の課題解決にも取り組んでいます。
そんな若き28才のChallenger 徳永さんに、農業を通じた環境問題への想いを伺いました。

リンゴを通じて
地域・従業員・お客さんの3方良しを目指す

ー 年間2万件の注文を抱えるフルプロ農園さんですが、どのような特徴があるのでしょうか?

フルプロ農園の特徴は、農協を通さず100%直売で運営していることです。
お客さんと直接やりとりすることで密な関係をつくり、時代によって変わっていくお客さんの様々なニーズを肌で感じながらマーケティングしていくことで、時代の先を行くリンゴ農家を目指しています

長野市では、農家さんの高齢化や地主さんがお亡くなりになることで、年々耕作放棄地が増えてきています。他方で、長野市は県庁所在地であることから、景観等の理由で耕作放棄地としてはいけない土地などもあります。ですので、コストに見合う畑は積極的にお借りすると共に、借り手がつかない耕作放棄地は森に返す活動をしています。耕作放棄地ゼロを目指し活動を進めていくなかで、現在では私が農園を継いだ当時から3倍の面積を持つようになりました。
また、農業には屋外での大変な労働外作業も多く、そうした重労働に見合った給料を従業員に払っていく為に、需要に見合った適正な価格でリンゴを売っていけるように日々戦略を考えています。現在では、より多くのりんごを届けるための持続的な経営を目指し、EC販売等のITも積極的に導入していまして、農閑期にも利益が絶えないように工夫しています。
日本国内の胃袋の量は決まっているので、今後はタイ・香港・台湾等の海外市場へ輸出していくことも視野にいれています。その他、働き手が不足しがちな農業と働き先を探している福祉事業所とで連携し雇用創出にも力を入れています。よりよい雇用環境を創り、稼げる農業を生み出していくことで、地域産業の活性化にも繋がればよいと思っています。

環境の変化をひしひしと感じる農業
そのなかで何ができるか

ー 地域のため、農業のため、長野のためと農園を継いでから5年間でかなり多彩な活動をされていますね。農業に携わる中で、自然環境の変化などは感じますか?

そうですね、気候的な変化はやはり感じます。
長野という土地は寒冷地であり冷暗な気候のため、サンつがるなど寒冷地で色がつく品種を育てていました。ところが、最近ではサンつがるのような品種では赤い色がつかなくなってきました。
発色の違いで味はあまり変わらないのですが、リンゴの特徴として見た目から入る味があると思っています。真っ赤で発色のよいリンゴの見た目も含めて、リンゴを味わっているのです。

こうした寒冷地用の品種が発色しなくなっていくのであれば、着色のいい品種を積極的に導入しなければならず、言い換えれば品種を入れ替えていくことになります。
10年前は夏場でも1日ぶっ続けで作業できましたが、今の気候だとそうした作業はできなくなりました。リンゴにも農業に関わる人の働き方にも、影響が出ています。

ー フルプロ農園さんでは、新しい栽培方法を通じて減農薬にも取り組まれていると伺いました?

はい。フルプロ農園では、高密植栽培という新しい栽培方法を開発しました。

同じ栽培面積で収量が3倍増えますし、農薬散布量も1/3減らすことができました。最終的には農薬を使わなくてよい方法も模索しています。
私たちは県外からいらっしゃる方が気軽に農業を体験できる農泊のサービスも提供しています。
地方にいると、環境問題に対して意識をもって物事に取り組んでいる人があまりいないように感じますが、こうした農業における様々な取組みを通じて、僕なりに環境問題へアプローチできればと思っています。


ー 最後にみなさんに伝えたいことはありますか?

今は、農業にとって時代の変わり目だと感じています。
マーケティングを分析していくと、贈答用文化が減ってきた代わりに自家消費用のニーズが増え、お得感をもってワケありや規格外などの果物を買っていただけるようになりました。
最近は「曲がったキュウリでもよい」と考えるお客さんも出始めてきていますが、最近気づいたのは、そうした商品で満足する人が増えると、よい品質のよいものを消費者に届けようと真っ直ぐなきゅうりを作っている人たちの商品が売れなくなっていくんだなということです。需給のバランスをみて生産量をコントロールしているなか、いいものを作っている農家の生産物が生産調整で廃棄せざるを得ない場合も出てきています。
なので、こうした新しい消費者のニーズに対して農家がどう対応していくか、まさに変わり目だなと思います。

最近は最初から無農薬でやろうとしている就農者も多いですが、リンゴは野菜と違って果実が甘いため、虫も当たり前のように食べに来ますし、水管理も容易ではありません。何年経っても販売できるクオリティのりんごができない場合も少なくありません。
需要自体が多様化していくなか、また農家さんが減っていくなか、高い品質のリンゴ供給を減らしてはならないという使命感をもち、心を豊かにする親しみやすいリンゴを、これからもみなさんにお届けできればと思います。


●取材を終えて
常に「どんなものをつくれば、お客さんの心に刺さるか。」を考え、農業に新しい風を吹き込む徳永さん。食後にひとかけらでもリンゴを食べるだけで気分が上がる、それはまさに心を豊かにしていくことだと優しく語られている姿が印象的でした。
最近では様々なサービスにより、消費者と生産者の距離が近くなったように思います。
自分が応援したい生産者から食べ物を購入することもできる時代ですし、また家庭内でフードロスがないようにしていくなど、日々の生活のなかで私たちにもできることがあります。
目の前にある食べ物は、それをつくる生産者たちがいるからこそ成り立つもの。
多様化する私たちの需要に応えつつ、「少しでも美味しいものを」と信念をもって厳しい自然の中で挑戦する徳永さんのような農家さんたちを、私たち消費者が選び、食べることで支えていく必要がありますし、つくる側とたべる側、双方で環境問題を意識した取組みが広がっていければと思います。
あなたも今日りんごを食べて、未来の農業の在り方に思いを馳せてみるのは如何でしょうか?
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https://frupronouen.thebase.in/