みんなで学ぶ ファッション×流行×環境問題 イベントレポート

9月10日(金)に「みんなで学ぶ ファッション×流行×環境問題」を開催し、当日はスピーカー含め28名の方にご参加いただきました。

●当日の様子
CO+代表の才野さんからは、衣服の製造プロセスのうち何がブラックボックス化しやすいのか、事実を知った上で私たちはどのようなアクションが必要なのか、様々な示唆をいただきました。
またパリ在住ファッションジャーナリストの井上さんからは、フランス最大のコングロマリット LVMHにおける最新の動向をご紹介いただき、サステナブルに対するラグジュアリーブランドの本気度を改めて肌で感じるイベントとなりました。

イベント全体としては、ファッションと環境問題の関係性のみならず、労働問題、福祉やマイノリティに関する取組・課題など、多岐にわたって知見を深めることができ、アンケート結果からも満足度が高いイベントになりました。

●CO+代表 才野さんのおはなし
・CO+の立ち上げストーリー
「インドの社会的・経済的に弱い状況にある人たちに、安定した雇用を提供したい」という背景からCO+の事業を立ち上げた。
・衣服の一生を知る、考える
私たちが衣服を手にして捨てるまで、
①デザイン企画→②原材料調達→③紡績→④染色→⑤裁断・縫製→⑥販売→⑦利用→⑧排出・回収、と主に8つのプロセスがあり、私たちは主に⑥販売~⑧排出・回収しか知らない場合が多い。
・各プロセスにおける社会課題
②原材料調達では児童労働や農薬暴露による健康被害などの課題、⑤裁断・縫製では2013年のラナプラザ崩壊事故で明るみに出たような劣悪な労働環境の課題など、各プロセスごとに大きな社会課題を抱えている。

②原材料調達における社会課題・環境問題

・決して他人事ではない
日本においても外国人労働者の労働環境が取り立たされるように、これらの課題は決して他人事ではない。私たちが何も知らずに衣服を買っていることで、そうした課題に加担している可能性がある。衣服製造においては、1つのプロダクトに世界中の数十~数百のサプライヤーが関与しているともいわれるほど様々な国・企業が絡んだ複雑なサプライチェーンによってつくられており、消費者やブランド自体も各プロセスの透明性を意識してこなかったことが現状を引き起こしていると考えられる。
また日本においては、毎年推計10億着の新品の服が焼却処分や埋め立てなどで廃棄されており、大きな環境負荷が問題となっている。これには、私たちの消費の在り方自体にも問題があるのかもしれない。

私たちとファッションの関わり

・私たちに何ができるか
透明性あるプロダクト作りをしているメーカーの服を買うことも選択肢の1つであると共に、私たち1人1人の消費スタイル自分なりのおしゃれとは?など、新たな視点で衣服との付き合い方などを考えていく必要がある。

私たち1人1人が服との付き合い方などを考えていく必要があるのではないか



●パリ在住ファッションジャーナリスト 井上さんのおはなし
・LVMHで進む本格的なサステナブルな取組み
フランスには2大コングロマリット(ファッションだけでなく百貨店など様々な業務形態を扱う複合企業)が存在するなか、LOUIS VUITTONやDIOR・FENDIなどを手掛ける”LVMH”というコングロマリットでは、1992年からサステナブルを意識したプロダクト製造や業務改善がなされてきた。デザインの段階から修理・廃棄まで見越したプロダクトの企画を行うとともに、サプライヤーの労働環境の是正やサプライヤーによるCO²排出量も厳しくチェックするなど、様々な改善に注力している。
また巨額を投じて環境に優しい新素材の開発を行うなど新しい研究開発も進められており、期待が寄せられている他、プロダクト製造時に余る高品質なファブリックやレザーを他のメーカー等に販売するBtoB事業などもスタートしているなど、サステナブルを主軸とした新しいビジネスがどんどん出てきている。

2大コングロマリットのうち、今回はLVMHに注目

・サステナブルとファッションの矛盾
他方で、ファッション=「流行を作り、消費させること」であり、ファッションを作り続けていくこと自体がそもそもサステナブルではないという見方もある。究極的には「消費しない・新しい製品を作らない」ことが最もサステナブルであるかもしれないなか、流行を生み出すデザイナーたちもみな葛藤を抱えながら、デザイナーにとってのサステナブルとは?、ファッション業界におけるサステナブルとは何か?を常に問い続けている。
井上さんがデザイナーへ取材した際には、「よりよい選択肢を提供することが使命」、「サステナブルを宣伝文句にはしない。結果的に良質で価値ある物だけが求められる」などのコメントが寄せられたという。また、ChloeのCFOに取材した際は「ブランドの存在意義や信念、価値観、つまり”パーパス”が商品や美学と同じくらい重要なものになる」といった考えをお話しされたようで、サステナブルを求めていくなかでのブランドの存在価値をまさにトップの経営層が探求しているという状況である。

消費者の私たちにもサステナブルかどうか、見極める力が求められている

・すべてのマイノリティをインクルージョンする
2020年、GUCCIのコレクションではダウン症の方がモデルとして起用されるなど、誰もが着られる衣服をつくろうという動きがより一層活発化してきている。ヨーロッパのファッション業界ではすでに”ジェンダ―レス”の価値観が当たり前に浸透しており、日本のファッション業界とは歴然の差がついている。

デザイン自体がサステナブルになっていくと共に、インクルージョンへの動きも加速化


●参加者からの声
・ファッション業界が環境に与える影響は色々と問題だらけではありますが、企業の素晴らしい取り組みなどもたくさん聞くことが出来て、希望も持てる講座でした。
・若い方が環境問題に取り組み、ビジネスとして経済に組み込もうと活動しておられることで、希望が持てる気がしました。
・フランスのブランドでは1990年代からすでにサステナブルな取り組みが行われていたり、環境以外のマイノリティーへの活動も現在では積極的に行われていることを知り、日本ではまだサステナブルな活動は遅れていると感じました。現在はsnsで簡単に情報共有が可能なので自らサステナブルな活動について発信していきたいと思いました。

●次イベントのご案内
次イベントは、10月2日(土)14時~15時に「Discovery your Thailand タイにおける環境問題・エネルギー問題」について学びを深めていきます。
第1弾では、タイの経済状況や宗教的文化などを中心に学びましたが、第2弾はいよいよ本筋の話題となります。第1弾にご参加されていない方でも全く問題なく知見をキャッチアップできますので、ぜひお気軽にお申し込みください。(申し込み開始まで、今しばらくお待ちください。)